ボディビルダーのほとんどが、炭水化物、タンパク質、脂肪のグラム数を中心に、栄養素の計算を行っている。しかし自分が見たところ多くのボディビルダーは体にとって最も大切な「水」を十分に摂っていないようである。水は体にとって最も大切な栄養素である。脳の75%は水で出来ているし、血液の82%、筋肉の70%が水なのである。このように、水は筋細胞含むすべての血液中に存在する。そして細胞が栄養素を受け取り、老廃物を排出する媒体の役目を果たしているのである。

 体内で起こる全ての化学反応には水が関係している。毎日誰もが気が付かないうちに、体内では何億と言う化学反応が起こっている。これには、タンパク合成、脂肪分解に必要な化学反応も含まれる。つまり水分の欠乏は化学反応を遅らせ、スポーツパフォーマンスにネガティブな作用を及ぼす。逆に水を十分に摂っていれば、これらの化学反応が最も望ましいスピードで効率よく起こるのである。このように十分に水分を摂っているビルダーは、慢性的に水分が不足しているビルダーよりも、ハードにトレーニングする事が出来るし発達も早い。

 では、水が体にとっていかに大切か、と言う例をあげてみたい。

 たとえ十分なカロリーを摂れていなくても、ハードにトレーニングする事は可能である。しかし、2日間水を飲まずにいたら、トレーニングするエネルギーは全くなくなってしまう。

人間の体は食物なしでも脂肪を使って数週間は生きられるようにできている。しかし、水を摂らなかった場合、10日間ももたないと言われている。

 また運動しているものは、していない者より、ずっと多くの水を必要とする。なぜなら汗をかくことによって、大量の水分とミネラルが失われるからである。つまり運動している者が水を摂らなければ、5日以内に死んでいまうかもしれない。

 平均的な成人の場合、一日に最大2ℓの水を消費、排出する。しかし、ボディビルダーの場合は、これよりずっと多くの水が必要となる。つまり、筋肉が多ければ多いほど、それだけ多くの水が必要となるのである。体重70kgでトレーニングを行っていない平均的な男性は、93kgあるボディビルダーの3分の1の量、140kgあるボディビルダーの半分の量しか水を必要としない。それに、ボディビルダーは座りがち人より、たくさん汗をかくので、よけいに水分が失われてしまう。更に、ウエイトトレーニングは、体内で何千という化学反応を引き起こす。この事だけでも水分の必要量を爆発的に増やすのである。また、暑い場所でトレーニングしているビルダーは、さらに多くの水を失っていると思わなければならない。  

 では一体、一日どのくらい水を摂ったら良いのか、最低限度の目安を示しておきたい。

 体重(kg) 必要な水分量(ℓ)

  4568      4

  6991                  5

  91以上                  6

 

 多くの人にとって、喉の渇きは、体が水を必要としているシグナルである。この喉が渇くという感覚は、血中の塩分量によってコントロールされている。塩分量が高ければ、脳に指令が送られ、それが喉の渇きとして体験される。血中の塩分はまた、口の渇きを起こし、これはもっと水を飲めと言う合図になる。しかし多くのボディビルダーは、塩分の低い食事をしている。つまり、喉の渇きは常に信頼できるシグナルだとは限らなくなる。喉や口が渇かなくても、細胞レベルで水分が不足している事がある。

 また、塩分を多めに摂っているボディビルダーは、電解質のバランスを保ち、塩分を体外に排出するために、より多くの水を摂らなければならない。もし、塩分の高い食事をしているのに、その塩分を体外に排出するのに十分なだけの水を摂らなかった場合、体はフラットに見えてしまう。

 それに、以前のべたように、ボディビルダーには、除脂肪体重1kg当たり、少なくとも2gのタンパク質が必要である。この様に高タンパクを摂取する場合にも十分な水を摂る事が必要になる。これはタンパク質が代謝されるときに生じた老廃物を排出する役目を担う腎臓をサポートするためなのである。

 水は、摂りすぎると言う事はない。人間の体は、余分な水を排出するようにできているので心配はない。